コーヒーの生豆の中には何がある?(そして焙煎で何が変わるのか)
Emanuele Tomassi焙煎中、すべてが止まったように感じる瞬間があります。ドラムが回り、プロファイルが進むなかで、私は色も形も構造も変わっていく一粒の豆をじっと見つめています。
そんなとき、なぜこの仕事を始めたのかを思い出します。一粒一粒に物語があり、それは複雑な生物学的システムであり、その土地を純粋に表現したものだからです。
それを本当に伝えるには、始まりから話す必要があります。
ただの豆ではなく、種
私たちが毎日焙煎しているコーヒーには、ぱっと見よりもずっと魅力的なルーツがあります。それはただの豆ではなく、コフィア(Coffea)属の植物になる核果の中に入った種なのです。小さな果実で、品種によって赤や黄色に色づき、中にはふつう向かい合った2つの種が入っています。この種が収穫され、精製され、乾燥させられて、私たちがふだん「生豆」と呼ぶものになります。まれに、果実の中に丸い種がひとつだけできることがあり、これはピーベリーと呼ばれます。

乾燥させて安定させた種は、熱を加える前の、もっともありのままの姿をしています。この状態でこそ、成分がぎっしり詰まった整然とした層でできた豆の内部構造が見えてきます。表面には、ぴったりと張りついて豆を守る薄い銀色の膜(シルバースキン)があります。そのすぐ下にあるのが胚乳。焙煎の主役となる化学のすべてが集まった、豆の脈打つ心臓部です。その内部には、すでに活動を止めてはいますが、胚も残っています。
この胚乳にこそ、目には見えないけれど決定的な世界が隠れています。炭水化物、タンパク質、脂質、酸、アルカロイド、ミネラル、水分が複雑に組み合わさった世界です。これらの成分のひとつひとつが、フレーバーとカップの特徴を決めるうえで重要な役割を担っています。

炭水化物
もっとも多いのが炭水化物で、生豆の35〜50%を占めます。その中には、構造を支える役割を持ちながら焙煎には直接関わらないセルロースのような複合糖質があります。さらに、粘性、ひいてはカップで感じるボディに寄与するガラクトマンナン、そしてクレマの形成やその安定性、全体のテクスチャーに影響するアラビノガラクタンがあります。焙煎中、これらの糖はメイラード反応の主役となります。この反応で何百ものアロマ成分が生まれ、その中には焙煎したコーヒーらしい香りの多くを生み出すピラジン、フラノン、チアゾールも含まれます。

タンパク質
糖と並んで、タンパク質が豆の9〜12%を占めます。遊離したものと結合したものの両方のアミノ酸からなり、タンパク質もメイラード反応に加わります。焙煎したコーヒーの深い茶色のもとになるメラノイジンや、トースト、モルト、ヘーゼルナッツ、チョコレートを思わせる含窒素アロマ成分の形成に関わっています。タンパク質の濃度が高いとアロマがより複雑になりますが、焙煎を慎重に管理しないと苦味が強くなることもあります。

脂質
含有量が10〜15%と幅のある脂質は、目立たないながらも欠かせない役割を果たしています。主にトリグリセリド、ジテルペン(カーウェオールなど)、ステロールからなり、焙煎中に大きく変化することはありませんが、揮発性のアロマを閉じ込め、飲みものにシルキーさと余韻を与えるうえで欠かせません。脂質が十分にあると、特にエスプレッソではより濃密なクレマになり、口の中でよりリッチなカップになることが多いのです。

クロロゲン酸
もうひとつの重要なグループがクロロゲン酸で、生豆の5〜10%を占めます。代表的なのは5-カフェオイルキナ酸とジカフェオイルキナ酸です。焙煎中、これらの成分は分解され、苦味や渋みの原因となりうるキナ酸と、明るい酸味のもとになるカフェ酸に変わります。この分解をうまく管理できれば、生き生きとして明るいカップになります。しかし進みすぎると、不快でとげとげしい、薬のようなフレーバーが現れ、飲みもののバランスを崩してしまいます。だからこそ、タイミングとディベロップメントの曲線がとても重要になるのです。
アルカロイド
含窒素化合物の中でも際立つのが、2つのアルカロイドです。ひとつはカフェイン。熱に安定していて、生の状態から最後のカップまでほとんど変わりません。もうひとつはトリゴネリン。焙煎中にニコチンアミド(ビタミンB3)とピリジンに変わります。ピリジンはスパイシーで香ばしいプロファイルを持つアロマ分子で、ペッパー、レザー、土を思わせます。トリゴネリンはよりフローラルで甘いアロマとも関係していて、それは特にナチュラルやアナエロビックで発酵させたコーヒーに表れます。
ミネラル
豆に含まれるミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄など)は、それ自体に香りはありませんが、焙煎と抽出のさまざまな面に影響します。豆の熱伝導率を左右し、カップのpHに影響して酸味の感じ方を変えます。特にマグネシウムはエスプレッソで甘さを際立たせ、カリウムは塩味のバランスに作用します。
水分
最後に水分。見落とされがちですが、欠かせない要素です。理想的な水分量は、正確に測って10〜11.5%ほど。豆が湿りすぎていると、熱がうまく中まで伝わりません。逆に乾きすぎていると焙煎が速く進みすぎて、本領を発揮する前に「焦がして」しまうおそれがあります。たとえば0.5%といったごくわずかな違いでも、焙煎中の豆のふるまいに大きく影響することがあります。
種の中のひとつの宇宙

生豆を見るとき、私たちはそれを材料と見ることも、時間と空間を旅してきた複雑な有機体と見ることもできます。
それは雨であり、風であり、光であり、発酵でした。摘みとる手であり、乾かす太陽であり、呼吸する空気でした。そして何よりも、変化を待っている純粋な化学なのです。
ボディをつくる糖から、アロマを閉じ込める脂質、個性を形づくる酸やミネラルまで、そのすべての成分が目的を持ってそこにあります。そして私たち焙煎士には、その声に耳を傾け、理解し、敬意をもって向き合う責任があります。
生豆は出発点ではありません。すでに自然と土地によって完璧に設計されたシステムなのです。
焙煎は豆を良くするのではなく、明らかにするのです。
それを本当にうまくやるには、まさにここから始めなければなりません。一粒の種に隠された科学からです。